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当院に関係する症状や治療方法について解説しています。


大腿骨頚部骨折とは

大腿骨頚部骨折とは広義には大腿骨の近位端の骨折であり、関節包内におこる内側骨折と関節包外におこる外側骨折に分けられます。

正常な膝関節イメージ

老人に頻度が高く、単なる骨折にもかかわらず体動が困難となり、かつ臥床を強いられるために床ずれや肺炎、認知症といった色々な合併症を引き起こします。全身に与える影響が大きいので、老人の骨折では最も重要な骨折です。
原因は転倒といったささいな外力によることが多く、骨粗鬆症が背景にあります。
大腿骨頚部は力学的にも血行動態からも不利な点を持ち、内側骨折は血流が乏しいために最も骨癒合の得にくい骨折とされてきました。

症状、診断

歩行、立位ができない。強い疼痛を訴えるが患者さんは股関節痛と限定できないことが多い。患肢は外旋位をとりSLR(膝伸展位での挙上)や体位変換ができない。股関節はほとんど自力では動かせず、他動的に動かすと強い痛みがあります。
大転子部の叩打痛や介達痛が強い。確定診断はX線写真、CTにより確実となります。

治療

高齢者が多く、早期のリハビリを行う為にも手術治療が中心となります。内側骨折に対しては人工骨頭置換術が主となり、外側骨折に対してはCHS,γーNail等による観血的整復術を行います。

人工骨頭置換術

高齢者では最も多く行われる手術術式です。70歳以上の高齢者では骨接合術の免荷期間の長いこと、遷延治癒や偽関節形成、骨頭壊死などによる再手術の可能性を考えると、寝たきりにならずに限られた余命を有意義に使うためにも、早期離床が可能で術後成績も安定した人工骨頭置換術は優れた方法と言えます。

人工骨頭置換術:図1 人工骨頭置換術:図2

人工骨頭置換術の合併症

1) 人工骨頭の脱臼:術後は患肢の安静が必要です。保てない場合、人工関節が脱臼する場合があります。術後しばらくの間、三角枕を使って良肢位をとるようにして脱臼の予防をします。

2) 感染:褥瘡、膀胱炎、肺炎等の感染症の存在や尿便失禁などの手術部位汚染の危険がある時は手術適応は慎重でなければなりません。感染が起こると再手術や人工骨頭の抜去が必要になることがあります。術後の感染に対する注意が重要です。

3) 深部静脈血栓症:エコノミークラス症候群と言われているのと同じで股関節の手術では血栓ができやすいので、術前、術後に両下肢にストッキングをはいたり、術後に血栓予防のための薬剤を投与します。

その他にも、外側骨折に関してはCHS,γーNail等による観血的整復術を行います。

※CHSでの手術 (外側骨折):図3 ※CHSでの手術 (外側骨折):図4
※CHSでの手術 (外側骨折)
γーNailでの手術 (外側骨折):図5 γーNailでの手術 (外側骨折):図6
※γーNailでの手術 (外側骨折)

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