病院をギャラリーに
高知市の岡村病院(151床)において昨年の11月半ばから約1ヵ月間、「SEIGO(西悟)展」が開催された。
これは、高知県出身の現代美術アーチスト・西悟氏の個展で゛SEIGO"は西氏のペンネーム。同氏がこれまで毎年、全国各地で開いてきた個展の会場として、病院側がスペースを提供したというものだ。とはいっても、鑑賞者の対象を入院・外来患者やその家族に限っているわけでなく、一般の人たちも自由に入場することができるようになっている。
岡村病院が西氏と知り合ったのは、一昨年に竣工した病棟の増改築工事(詳細は小誌1995年11月増刊号参照)がきっかけだった。院長岡村高雄氏は増改築にあたって、落ち着いた、かつ明るい雰囲気をめざし、壁や床などの内装や全体の雰囲気づくりにこだわりを持っていた。そのなかで、西氏が、CT室内のデザイン(壁のペイント)と病棟廊下の絨毯のカラー・コーディネートを担当し、それ以来の交流が続いている。今回、院内に作品展示を行うことになったのも、二人のふとした会話から発展して実現に至ったものだ。
西氏は、病院での個展開催について、その案内状に次のように綴っている。 −芸術はわれわれ一人ひとりの人間の生きる姿勢を肯定する証であり、さらにこれからいかに生きていくかという希望・夢に対して正直な心の表現でもある。病院もまた人間の生に対して真正面から真剣に取り組んでいる場であり、そこには真の生きるという意味において希望・夢が満ちあふれているはずである。
芸術と病院、一見不釣合いな組み合わせのようだが、もしかして根底では同じ目的に沿って全身のエネルギーをそそいでいるのではとと感じ、今回病院内での展示、また病院とのコラボレーションを試みた−。
一方、岡村氏は病院内でプロのアーチストの個展を行ったことについて、「日頃は院内に適当な絵画などを展示していて、ときどきは作品を入れ替えていますが、今回の個展も多少なりとも患者の刺激になれば、と思っています」と話している。
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